「誤審か否か」だけでは見えてこない
選手がピッチで取るべきレフェリーとの距離
「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦
■なぜ、レフェリーと会話する必要があるのか
だから、僕がレフェリーの方と話をする場合に気を付けているのは、レフェリーの方を尊重することは当然として、その上で、「レフェリーの方の見解を聞いた後は、未来のことを話す」ということと、「基準を揃えてもらうよう主張する」ということです。
例えば、自分はファウルとは思っていないプレーでファウルをとられたとします。僕は不満です。
「今のはファウルですか?」
と尋ねます。大体、有無も言わせぬ様子で頷かれます。それはそうです。笛を吹かれているのですから。
そこでもし不満があれば、タイミングを見て、
「今のはこういう意図でやったプレーで、ファウルは厳しくないですか?」
と聞きます。すると、ここでそれを説明してくれるレフェリー、頑なに「ファウルだ」としか言ってくれないレフェリー、何も答えてくれないレフェリーなどに分かれます。
問題はこの後です。そのレフェリーの方の性格や特徴を踏まえた上で、
「こういうプレーは見ておいてくださいね」
という未来の話をします。そうすると大体、相手チームの選手も同じように、
「こっちも見てくださいよ!」
と主張をしてくるので、
「当然、相手も同じ基準で笛を吹いてあげてください」
と伝えています。
大切なことは、自分に有利な判定をしてもらうことではなく、ファウルをして止めようとしている選手を見逃さないようにしてもらうことです。それを間違わなければ、レフェリーの方も選手が主張してくることを嫌がったりはしません。
よく、レフェリーの方と話しているシーンを指摘して、「駆け引きしている」と言われることがありますが、僕の中では少し違います。書いてきたように、僕はただ、会話の中でレフェリーの方の基準や性格を知りたいという側面が強く、その上で未来を先に想定しやすくしておきたいのです。
これまで何度も語ってきたように、サッカーはほんの小さなディテールが勝負を分けます。それがレフェリングであることも当然あります。
問題は起こってからではもう取り返せません。問題が起こる前に、できることはしておかなくてはいけません。僕は心配性なので、これから起こることにできるだけ手を打っておきたいだけなのです。